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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第108杯「選択科目」

ぼくが受験していた頃の司法試験は、必修科目として憲法・民法・刑法・商法があり、選択科目として訴訟法選択と法律選択がありました。訴訟法選択では民事訴訟法か刑事訴訟法のいずれかを選択し、法律選択では、行政法・破産法・労働法・国際私法・国際公法・刑事政策・訴訟法選択で選択しなかった訴訟法から1科目選択するもので、ぼくは訴訟法は民事訴訟法を、法律選択は国際公法を選択していました。

民事訴訟法を選択した理由は、当時「努力の民訴、センスの刑訴」といわれており、刑訴コースは、刑訴のセンスがなかったら道の途中で行き止まりになり、合格にたどり着けないと考えたこと、他方で民訴コースは遠回りで時間はかかるが行き止まりにはならず、合格にたどり着く確率が高いと考えたことです。いわば「急がば回れ」の精神で民事訴訟法を選択しました。

国際公法を選択した理由は、「海賊」や「宇宙」等が出題され、法律の難解な用語があまり用いられず、与しやすしと思ったことです。当時、民訴選択者は破産法を、刑訴選択者は刑事政策を選択する傾向にあり、国際公法選択者は少なく、受験情報も少ないという難点もありました。通行人が少ない大平原の道なき道を近道かもしれないと思って選択した感じです。「急がば回れ」の精神とはちょっと矛盾します。

この2つの選択は正しかったのかというと時間はかかったけれど合格できたので正しかったといえるでしょう。ただし、選択科目が廃止され、民訴と刑訴が必修となる前の年(1999年)に合格しているので、民訴・国際公法コースが閉鎖される直前に合格にたどり着いたことになります。大平原の道なき道を近道と思って選択したところ、方向音痴のため途中で迷ってしまい、右往左往した挙句、危うく、選択地点に引き返してコース変更を余儀なくされ、刑訴を一から勉強する羽目になる難を逃れています。この年に合格できず、民訴ないし刑訴を一から勉強する破目になった人も相当数いました。合格まであと一歩の実力者でも、合格するのにさらに3年以上かかったり、結局、合格できなかった人もいます。ぼくも1999年に合格していなかったら、おそらく、その後、合格することはできず、あきらめきれずに今でも受験していると思います。当然、結婚もできないし、息子も生まれません。そういう意味で、科目選択は、ぼくの人生の分岐点でした。