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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第101杯「文字の持つイメージ」

ぼくは、自分の書いた文章を本誌等に掲載して読んでもらう機会を与えられています。字数調整や表現を修正する等、指示・手直しがありますが、会社によって、同じ会社でも担当者によって特徴があります。印象に残っているのは、食べものについてはカタカナ表記にするという指示です。同じ言葉でも、表記の仕方でイメージが変わるので戸惑いました。例えば「柚子胡椒」「ゆずこしょう」「ユズコショウ」でイメージは異なります。「柚子胡椒」は、昔ながらの作り方、柚子の皮と唐辛子と塩だけで作っている感じ、硬派な感じがします。「ゆずこしょう」は、砂糖やみりん等の調味料を加え、刺激を少なくしている感じがします。「ユズコショウ」柚子を使用していない。合成的に柚子の味を出している柚子風味の調味料で。柚子胡椒とは全くの別物のような感じがします。ぼくは「柚子胡椒」を「ユズコショウ」と手直しされたときは、納得がいかず、担当者と交渉の末「ゆずこしょう」で妥協しました。また、「とんかつ」と「トンカツ」とでは、「とんかつ」の方が上品、和風、現代風という感じがします。「トンカツ」はレトロ、昭和な感じがします。ぼくは、昭和好きの昔気質の人間なので「トンカツ」の方に惹かれます。これはカタカナ表記で良いです。

飲食店に「屋」をつけるのは避け、「店」をつけるよう、指示されたこともあります。ラーメン屋、焼鳥屋ではなく、ラーメン店、焼鳥店にしてくださいというのです。業界団体からクレームがついたことがあったのでしょうか。「店」は「屋」よりも、ややかしこまって行く上品な感じで、「屋」の方が庶民的・大衆的な感じがします。

また、「姓」も使用される漢字によって、イメージが変わります。イメージの良い文字の代表は「藤」で、これを「ふじ」と読ませる姓は、センスの良い、華やかな感じがします。「田」「山」「村」も、「藤」が上につくことでイメージが良くなります。「名」についても同様で、「富士子」「不二子」「藤子」はいずれも「ふじこ」と読みますが、名からイメージする人物は全く異なります。「走れメロス」という小説があります。日本の小説なのに、なぜ「メロス」なのか疑問でした。しかし、日本人的な名をつけると「走れ太郎」などとなり、全く性格の違う人物が主人公となる感じになり、何か変です。やっぱり「メロス」で良いのです。