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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第100杯「良い文章」

ぼくの人生は、小説家ほどではありませんが、文書を作成することが多い人生です。旧司法試験は毎年7月下旬に3日間実施される論文式試験が天王山とされており、そのための答案練習をして、日々生活していました。大学を卒業してから合格するまでの10年間です。弁護士になってからも裁判所に提出する文書、新聞・雑誌や業界誌への投稿等、様々な文書を作成しています。そのため、良い文章を書いて文書を作成することは、一生の課題です。

もっとも、文章は十人十色で、書き手ごとに個性があるので、必要な情報が記載されていれば、文書として内容的には問題ないと考えています。したがって、良い文章とは読みやすい文章だと思います。

ただ、自分にとって自分の書いた文章が一番読みやすいので、自分の文章が優れていると思ってしまいがちです。特に、自分の文章に自信があり、他人の文章を読みにくいとか稚拙だとか批判する人に、その傾向があり、そういう人に限って難解な言葉を並べた上、1文が長かったりして、文章が読みにくいことがあります。したがって、良い文章とは、読み手にとって、読みやすい文章だと思います。 また、頭の良い人でも、読み手のことを考えず、自分のレベルで文章を書いてしまうと、読み手にはよくわからない文章になってしまいます。逆に自分が頭が良いとは思っていない人は、難解な言葉を使わず、平易な言葉を使うので、文章は読みやすくなる傾向にあると思います。

それから、自慢話を聞かされたり、説教されることは皆、嫌いだと思いますので、自分の実績のアピールはほどほどにして自慢話との印象を与えず、こうしろ、ああしろ、改めよと上から目線で命令調・説教調の文章にしないことで、感じの良い文章となります。

今のご時世、特定の人の批評をすると、内容によっては侮辱だとか名誉棄損だとか言われかねないので、ぼくの場合は、業務上、相手方の主張に反論しなければならない場合を除き、特定の人のことを批判的に書かないようにしています。

このように、自慢話をしない、説教をしない、他人の批判をしないとなると、業務外で書く文章の内容が限られてきます。自分の体験談、それも読み手からすると同じ体験はしたくないと思うような話、端的に言えば自虐ネタが多くなります。

本誌のコラムも、間違っても名誉棄損にならないように、その方針で書いています。