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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第10杯「司法修習-実務修習(札幌)」

実務修習は、裁判所(民事)、裁判所(刑事)、検察庁、弁護士会を順番に回ります。ぼくは、弁護士会→検察庁→裁判所(刑事)→裁判所(民事)の順でした。弁護士会では、司法修習生各自に1人ずつ、指導担当弁護士がつきます。札幌弁護士会で司法修習生の指導をしてくれる弁護士は、真面目な先生が多く、中でも、ぼくの指導担当の弁護士は、本当に真面目な先生でした(今でも、もちろんご健在です。)。事件を類型ごとに分類して、類型ごとに裁判書面の書き方を指導する司法研修所での教育方針に批判的な先生で、司法研修所で出している手引きやマニュアルを使うことを嫌いました。司法研修所での指導とは正反対のように感じましたので、正直、面食らいました。その点について、先生に質問すると、司法研修所の教育方針のあり方について、朝の5時まで、あれこれと説諭されたことを懐かしく思い出します。当時は、朝の5時までかかっても、ぼくには先生の言うことが理解できませんでしたが、弁護士になってしばらくたって、理解できるようになりました。裁判所というところは、各事件の共通点を拾って、事件間で不公平のないように事件処理するよう心がけていると思われ、これに対して弁護士は、その事件特有の事情を強調して、当該事件について妥当な解決を求める活動をするので、最高裁判所が管轄する司法研修所と、弁護士とでは、司法修習生に対する教育方針が異なるのは、当然と言えば当然と思います。事件間の公平な処理を突き詰めると、どの弁護士に依頼しても結果は同じ、弁護士に依頼しなくても結果は同じことになりますので、ぼくの指導担当の先生が、司法研修所の教育方針に批判的だったのは、そういう意味だったのかなと思っています。弁護士会での修習では、酒を飲む機会が多いのではないかと期待しておりましたが、札幌弁護士会の弁護士は、真面目な先生が多く、一部の先生を除いては、行事がある時以外はあまり飲みに行かず、行っても酒の肴が仕事の話や弁護士のあり方の話で窮屈でした。仕方がないので、自分で飲みに行くようになり、行くなら肴が旨い店ということで、あれこれ調べて、あちこちに行きました。好きなときに好きなだけ飲食したいので、たいてい1人で行きます。後に、ぼくのライフワークとなる「居酒屋のはしご」は、これがルーツとなっています。