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世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第8杯「合格するとこうなる」

口述試験期間中から最終合格の発表まで、毎日、近所の神社にお参りに行き、合格祈願をしました。最後は、やっぱり神頼みということでしょう。関係ありませんが、近所にドリフの高木ブーや五体不満足の乙武君が住んでいました。口述試験終了から10日くらいで最終合格の発表があり、発表までの間、落ち着かなかったので、毎日飲みました。足かけ10年、今まで不合格経験しかないので、自分が合格するイメージが湧かなかった。合格発表の日、無事合格しておりました。うれしかったけど、口述試験が終了した時の方がうれしかったな。とにかく、ほっとしました。既に33歳になっていました。やっぱり4~5年余計に時間がかかっています。でも、合格できたのだから、良しとします。

合格すると、その日から突然、周囲の扱いが変わります。今までは、社会に何の貢献もしていない存在でしかありませんでしたが、合格すると、急に立場が変わって教える立場になり、合格祝賀会や司法試験受験予備校での仕事の案内には「先生」として案内が来ます。今まで、司法試験委員の大学での講義に潜り込んで時折質問したりして、煙たがられておりましたが、合格後、講義に出て御礼を言いに行くと「せっかくだから、お名前をお聞きしましょう」と初めて人としての扱いを受けました。

合格すると、翌年の4月から司法修習が始まります。それまでの半年間は、受験勉強で疲弊した人間性を取り戻し、社会に出るための準備期間とされており、旅行に行ったり、司法修習の予習をしたりするのが通常ですが、ぼくは、その期間のほとんどを後輩たちの受験勉強の手伝いに費やし、自分が受験していた時とあまり変わらない生活を送っていました。受験生活の厳しさが身に染みていて、合格したからといって、足を洗うことができなかったのだと思います。そのおかげで、司法修習では落ちこぼれる破目となりますが、その話は、また今度します。

酒も、いい酒を飲めるようになり、そういう機会も増えましたが、うまさという点では、受験勉強しながら夜9時から飲んでいたグレンフィディックの年数表示ないものが一番ですね。まさに命の水でした。この年は択一試験の刑法や論文試験の民事訴訟法、口述試験の商法でツキがありました。ツキがなかったら、おそらく今でも司法試験を受験しているのではないかと思います。