しらかば法律事務所TOPメディア旭川 連載記事 世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』 > 第7杯「人生史上最大の緊張」

メディア旭川 連載記事
世論遊論 『酒と泪と男と司法試験』

第7杯「人生史上最大の緊張」

ぼくが受験していた旧型の司法試験では、論文式試験に合格しても、合格発表の2週間後に始まる口述試験に合格しないと最終合格できません。口述試験は、憲法・民法・刑法・商法・民事訴訟法・国際公法それぞれについて、試験官2名と面接して、法律的問答を行います。10人に1人の割合で不合格となり、6科目のうち、4科目でマイナス点がつかなければ、合格できると言われていました。1日1科目で、選択していない科目の試験日は休みになるので、試験終了するまで10日間ほどを要し、その間、極度の緊張状態に置かれます。試験がある日は、まず午前と午後に振り分けられ、くじ引きで10数人1組で13組くらいに分けられ、組の中での面接の順番も決まります。1番くじを引けば、すぐに順番が回って来ますが、午後の部でビリくじを引くと、17時過ぎまで待機しなければならず、精神衛生上非常に厳しいです。自分の順番が近くなると別室に移動し、次の順番になると「発射台」と呼ばれる特別席に移動し、前の人が試験室から出てきたら、試験室に入って試験官2名と問答します。試験中は、緊張状態の極限となります。ぼくの人生において、間違いなく一番緊張しました。ぼくは、1日目が民事訴訟法、2日目が刑法、3日目が民法、4日目が商法、5日目が憲法、何日か休みが入って最後は国際公法でした。1~4日目は、その科目というよりは、関連する別科目の質問がなされ、非常に面食らいました。法律ってのは視野を広く横断的に理解しなければいけないのだなと思いました。それでも、大きな失敗はなく、4日目に商法なのに民事訴訟法の質問がなされ、全然回答できす、これはマズイと思い、最後の質問に苦し紛れに答えたら正答だったらしく、試験官に褒められて解放されました。これで4科目で少なくともマイナスはついていないと思い、これで何とかなると思うと、気持ちが楽になり余裕が出来ました。5日目は午後のビリくじを引いて、試験会場に最後の1人になるまで残る破目になりましたが、翌日以降休みが入っていたので、事なきを得ました。国際公法の試験が終了して、試験会場を後にする時、空を見上げたら抜けるような青空で秋晴れでした。受験開始から10年を経過しており、これでもう司法試験の受験勉強から解放されるのかなとも思い、感慨深かった。後にも先にも空を見て感慨にふけったのはこのときだけです。