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北海道経済 連載記事

2023年11月号

第164回 日弁連初の女性会長?

日本には約4万4000人の弁護士がいる。司法制度や法律の制定・改正、政策などに強い発言力を持つ日本弁護士連合会の代表が日弁連会長。今回は、会長選挙をめぐるこれまでにない動きに注目する。(聞き手=本誌編集部)

日本弁護士連合会(日弁連)の会長といえば、弁護士業界のトップです。来年の2月、新しい会長を選ぶ選挙が行われます(任期は2年)。すでに事実上の選挙活動が始まっています。

東京弁護士会(東弁)所属の渕上玲子弁護士が9月27日、旭川市を訪れ、旭川弁護士会に所属する弁護士14人と意見交換をしました。渕上氏は次の日弁連会長に出馬する意向であり、事実上の選挙活動をスタートさせています。渕上氏を応援する弁護士らが作る団体とともに、各地の弁護士会を訪れて会長選での支持を呼び掛けています。

会長に当選するためには、弁護士一人一票の選挙で最多票を獲得すると同時に、全国52の単位会の3分の1以上(18以上)の単位会で最多票を獲得しなければなりません。二つの条件を満たす人がいなければ決選投票です。35単位会で最多票を獲得している限りは落選することはないので、接戦の単位会に対して多数派工作が行われます。旭川のような小規模弁護士会は数票の動きで最多得票候補が変わり得るので、熱心な集票活動の対象となります。

現在、日弁連会長を務めている小林元治氏もまた、東弁所属の弁護士です。その後継とも言える渕上氏は主流派であり、当選の可能性は極めて高いと言えるでしょう。

経歴も十分で、2017年度には、日本最大の単位会である東弁で初の女性会長を務めました。2020年度から2年間は日弁連の実務の中心である事務総長として、コロナ禍による裁判事件の滞留等に対応しました。私は旭川弁護士会の会長だった時代、日弁連の理事会やその後の懇親会で渕上氏に会ったことがありますが、面倒見の良い親分肌の人物という印象を受けました。

他に、千葉県弁護士会所属の及川智志氏も出馬の意向と伝えられています。及川氏は昨年の会長選挙にも出馬して弁護士の急増反対の主張を掲げ、地元の千葉県だけでなく埼玉、長野、富山、宮崎でも最多票を獲得しました。反主流派の声の受け皿になったかたちです。今回はさらに票を伸ばすことになりそうですが、それでも渕上氏の優位は動かないでしょう。

渕上氏は「公約」の中で、事務総長としても推進してきた裁判手続きのIT化への対応という目標を掲げています。単に裁判の中でITが使えるようにするだけでなく、ITの使用が義務化されるので、弁護士にとってはこれに配慮した対応が必要となります。私のようにメールで届いた書面も必ず印刷してから見る「IT弱者」「紙派」の弁護士にも配慮した対応をしてほしいものです。

来年の2月、日弁連初の女性会長が誕生するのは確実です。旭川弁護士会を含め、女性が単位会の会長となるのはいまや珍しいことではなく、これも時代の流れに沿った流れです。

法曹三者といえば裁判官と検察官、弁護士ですが、裁判官のトップの最高裁判所長官、検察官のトップの検事総長はこれまで男性が就任しており、女性が就任したことはありません。女性の就任は今後の課題です。