しらかば法律事務所TOP 北海道経済 連載記事 > 第149回 旭川で日弁連人権擁護大会

北海道経済 連載記事

2022年8月号

第149回 旭川で日弁連人権擁護大会

9月29~30日、旭川市内で「日弁連第64回人権擁護大会」が開催される。実行委員長を務める小林史人弁護士は、この機会に郷土の魅力が全国から集まる弁護士を通じて広く認知されることを期待している。(聞き手=本誌編集部)

弁護士法は第1条で「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」と定めています。弁護士の実際の仕事は刑事被告人の弁護から債務整理、成年後見など多岐にわたりますが、その根底には基本的人権の擁護という使命があります。人権にかかわる複数のテーマについて全国から集まった弁護士が意見を交わす場が人権擁護大会で、毎年秋に開催しています。

日弁連の大規模な行事としては他に定期総会があり、旭川でも2016年夏に開催されました。定期総会が日弁連という巨大組織の運営に関わる内部の行事であるのに対して、人権擁護大会は社会との関わりの深い行事です。旭川での前回開催は32年前でした。北海道、東北、関東など全国8つのエリアにある弁護士連合会が持ち回りで開くしくみで、道内には4弁護士会がありますから、32年に一度、旭川に順番が巡ってくることになります。

今回の人権擁護大会では、29日に2つのシンポジウム、30日に大会の開催を、大会の前に映画の上映をを予定しています。大会は人権擁護に関する決議案の採択や活動報告などを行います。大会は、弁護士会員のみで開催しますが、シンポジウムと映画の上映には一般市民の方にも参加いただけます。

シンポジウムのテーマは「高レベル放射性廃棄物問題から考える反原発」(第1分科会)と「デジタル社会の光と陰」(第2分科会)です。第1分科会は、道北の幌延町に放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発を行う施設があり、また道内から神恵内村と寿都町が最終処分場建設の前提となる文献調査に応募したことから、道民にとっても関わりの深いテーマです。第2分科会では、便利なネット社会に隠されたプライバシーや民主主義の危機という世界が直面する現象について考えます。いずれも29日12時30分〜18時で会場は第1分科会が旭川市民文化会館大ホール、第2分科会がアートホテル旭川です(入場無料)。

映画は、30日の朝9時20分から旭川市民文化会館大ホールで、役所広司主演の映画「すばらしき世界」を上映します(入場無料)。1986年に旭川刑務所を出所した実在の人物と、弁護士、裁判官の関わりや、受刑者が出所後に直面する困難を描いた映画です。八重樫和裕弁護士が実際に経験した出来事が物語のベースになっており、上映後には八重樫弁護士のスピーチも予定されています。新型コロナウイルスのために一昨年の人権擁護大会は中止され、昨年は規模を縮小しました。親睦行事も開催していません。今年は懇親会を開催しないものの、その他はほぼ例年通りの開催となります。

コロナ前の人権擁護大会には弁護士会員だけで約1000人が参加していました。今年は大会会場の入場制限のため750人程度が上限となりますが、家族や知人を連れてくる会員もおり、実際にはもっと多くの人数が全国から旭川を訪れます。来旭者には飲食や観光、そして本州より冷涼な気候も楽しんでいただき、来旭者を通じてこのまちの魅力が広く認知されることを期待しています。