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北海道経済 連載記事

2021年8月号

第137回 弁護士に男女差なし?

一昔前まで法曹界で女性は圧倒的な少数派だった。今回の法律法談では、「夫婦同姓は合憲」との最高裁の決定で改めて注目が集まっている法曹界の女性比率に注目する。 (聞き手=本誌編集部)

6月23日に最高裁判所大法廷は、夫婦同姓を定めた民法の規定は合憲との判決を言い渡しました。合憲判断に賛同したのは15人の最高裁裁判官のうち11人で、残り4人は違憲との少数意見を示しました。夫婦別姓を認めるべきと主張している市民団体などは、最高裁裁判官の男女比率が影響したと主張しています。現在、女性の最高裁裁判官は2人だけ。夫婦同姓で不利益を被るのはほとんどが女性であり、最高裁に女性がもっと多くいれば、結論も変わっていたはずというわけです。

最高裁の女性裁判官は過去最大3人で、現在は2人です。今のご時世、バランスが取れているとは言えないでしょう。一方、地裁から最高裁までの裁判官の女性比率は22・6%(2019年末時点)。昔より多いとは言え今も少数派です。

私は中央大学の法学部を卒業しましたが、当時、教養1クラス40数人のうち女性は2〜3人だったと記憶しています。それも付属高校からのいわゆる「エスカレーター組」です。法曹になった女性は、私の教養クラス・専門ゼミの同期の中にはいません。当時の1学年定員1100人、そのうち80名程度が司法試験に合格するのですから、1クラス3人程度しか合格しないのです。女性は年齢に対するプレッシャーが強く、旧司法試験では、浪人してまで司法試験を受けようとしなかったと思われます。

現在、旭川地方裁判所ではかつてないほどに女性の裁判官が増えています。民事、刑事、家裁を合わせて9人の裁判官がいますが(所長を含む)、そのうち4人が女性で、あと一人で半分以上を女性が占めるところまで来ました。ただ、彼女たちが夫婦同姓について何を思っているのかは、プライベートな事情について話す機会がないのでわかりません。

弁護士業界では、道北をカバーする旭川弁護士会の弁護士78人のうち11人が女性です。新しい司法試験制度が導入されてから女性の比率が高まっています。旭川地検にも少なくとも1人、女性検事が配属されています。

男性と女性、どちらが法曹になりやすいか、一概には言えませんが、司法試験の受験勉強には、粘り強く机に向かう女性の方が向いていると私は思います。

しかし、法曹になった後、女性の裁判官だからこういう判決を言い渡しやすい、女性の弁護士だからこういう分野を得意にしているといった差はないように思います。また、女性法曹は、女性だからと言われるのを一番嫌うだろうと思います。したがって「女性弁護士は神経が細やかだから、隅々まで行き届いた書面を準備してくれる」といったこともないでしょう。男性でも女性でも一般的な傾向として、弁護士になってから時間が経過すると、「慣れ」のため、書いても書かなくても結果は同じと考えるのか、書面がシンプルで短くなります(細かく書けば揚げ足を取られやすくなりますし、相手を執拗に攻撃すれば和解が困難になることがあるので、シンプルな書面のほうが望ましいとも言えます)。

入念な準備を済ませて期日を迎える弁護士もいれば、「出たとこ勝負」の弁護士もいます。こうした傾向には個人差がありますが、性別は関係していないように思います。